精神に関する病気で知っている病気で「うつ病」という言葉を聞いたことがある人は多いと思います。うつ病といっても症状は様々あります。
・うつ病の診断基準
・うつ病の分類
・うつ病のこころの症状
・うつ病のからだの症状
・うつ病の原因
・うつ病の症状では?と考えるきっかけを知ろう
以上の6項目からうつ病の症状について考えることで、うつ病に関する予防やとうつ病と関わって生活をする時の参考になれば幸いです。
うつ病とは?
うつ病は気分の落ちが普段以上に強く、日常生活の様々なことに興味が持てなることが続くことで、日常生活に支障が出てしまう状態です。
感情、意欲、思考に関する行動に支障がでることがうつ病の主な精神症状となります。
うつ病はこころの症状だけではなく、様々なからだの症状が加わることがあります。治療ではこころの症状とからだの症状を並行して行うことになります。
うつ病の診断基準について
うつ病の診断基準として、
・DSM-Ⅳ(精神障害の診断と統計マニュアル第4版/アメリカ精神医学会)
・ICD-10 (国際疾患分類/WHO)
以上2つの診断基準を紹介します。
<DSM-Ⅳ 大うつ病エピソードの診断基準(精神障害の診断と統計マニュアル第4版/アメリカ精神医学会)
下記の項目で5つ以上の項目が該当し、診断直近まで2週間以上続いているため、苦痛を感じて社会/日常生活に支障があると医師が診断した場合にうつ病と診断されます。ただし、「抑うつ気分」または「興味または喜びの感情が少なくなる」の2項目に関しては、どちらかは必ず該当しなければなりません。また、物質依存(薬物、アルコール等)や身体疾患で処方されている薬の副作用等で下記の症状がある場合には診断基準に該当しないことがあるので、うつ病を疑って診断を受ける際には受診時に処方されている薬の情報を医師に伝える必要があります。
・抑うつ気分がある
・興味や関心、意欲、喜びの感情が少なくなる
・痩せる、食べない、過食、太る(1ヶ月で以前の体重の5%以上の変化がある)
・不眠、睡眠過剰がある
・心身落ち付がないで焦燥感がある、心身が制止してしまう
・疲れやすく、無気力感がある
・自責心があり、価値観を感じない
・思考力、決断力、思考力の低下
・希死感情がある
ICD-10(国際疾患分類/WHO)の診断基準
下記の10項目のなかで何項目が当てはまるかで、軽症、中等症、重症に分類されます。
軽症: 1~3で2項目、3~9で2項目該当し、各々の症状が軽い場合
中等症:1~3で2項目、3~9で4項目該当し、社会/日常生活が困難な場合
重症: 1~3のすべて、3~9で4項目以上該当し、症状が重く社会/日常生活が不可能。妄想や幻覚が伴うこともある。
・うつ気分
・興味や喜びの喪失
・疲労感の増加
・自信の喪失
・無価値感や罪責感
・自殺など死を繰り返し考える
・将来に対する不安や悲観的な考え
・思考力、集中力、決断力の低下
・体重と食欲の変化
・不眠や過眠など、睡眠の変化
また、以下のうつ病に関しては専門家が用いる診断基準がなく、定義はありません。
・仮面うつ病:からだの症状はあるが、こころの症状が仮面を被ってしまい、気づきにくい
・現代型/新型うつ病: 症状が軽い気分変調症、非定型の症状はあるが、危険因子から離れた環境になるとうつ症状が出なくなる
うつ病の分類
うつ病は症状/状態/発生回数/病型により分類をすることができます。
・症状による分類
単極性うつ病:うつ病のなかでうつ状態だけの症状が「単極性うつ病」です
双極性うつ病:うつ状態と躁状態の両方がある症状が「双極性うつ病」です
・状態による分類
症状で支障がおきる日常生活の程度で分類されます。
軽度:仕事や日常生活、他人とのコミュニケーションに生じる障害が少ない状態で、周囲の人はあまり気がつかないことも多いです。
中度:軽度と重度の間の状態です。
重度:仕事や日常生活、他人とのコミュニケーションが明らかに困難になる状態です。
・発症回数による分類
単一性:発症がその時1度だけの場合に分類されます。
反復性:発症を繰り返すので、特に再発防止に対する対応が重要になってきます。
・病型による分類
メランコリー型
うつ病のなかでは発症することが多い、典型的タイプです。仕事や日常生活のなかで責務、役割に適応しているなかで、過剰に適応してしまい、脳のエネルギーがなくなる経過がある病型です。
・良いことがあっても気分が晴れない
・明らかな食欲不振や体重減少がある
・特に朝に気分の落ち込みが強くなる
・朝早い時間に目が覚めてしまう
・罪悪感を強く感じてしまう
などの症状があります。
非定型
・良いことに対して気分がよくなる
・食欲は過食傾向で体重増加がある
・寝過ぎてしまう
・倦怠感を強く感じる
・他人からの批判に過敏になる
などの症状です。
季節型
季節型のうつ症状は発症回数で分類されている「反復性」の一種になります。
特定の季節にうつ病を発症しますが、季節の変化とともに回復がみられます。どの季節でも起こりうるのですが、「冬季うつ病」と聞いたら分かる人もいるかもしれません。冬季うつ病に関しては日照時間との関係があるのではないかと言われています。
産後型
産後4週以内にうつ病を発症するタイプです。
・産後にホルモンの変化がある
・分娩の疲労を感じる
・今後の子育てに対する不安がある
・授乳などによる睡眠不足になる
などの要因が重なり、健康的な生活を営むことが難しくなっている状況が影響していると考えられています。
うつ病のこころの症状
こころの症状の主症状である「抑うつ気分」・「思考力の低下」・「意欲の低下」を紹介します。
抑うつ気分
・気分が落ち込むことが多い
・朝の抑うつ気分が強い
・悲しい気持ちになる
・憂うつな気分になる
・前向きな気持ちになれない
思考力の低下
・集中力が低下する
・作業能率が悪く、作業の失敗が増える
・決断ができない
・注意力が散漫になる
・人からの話が理解できない
意欲の低下
・趣味や好きなことがやる気になれない
・友人や家族と話したくない
・何もしたくない気持ちがある
・身だしなみを整えるのが億劫になる
・焦燥感を感じることが多く、焦ってしまう
・じっとしていられない
・日常生活に張りを感じない
うつ病のからだの症状
うつ病のからだの症状は、1つではなく様々な症状が出てきます。以下で紹介する症状があるが、医療機関で検査をしても原因が分からないことも多いです。
睡眠の異常
・入眠しにくくなり、寝付けない
・早朝覚醒があり、朝早くに起きてしまう
・中途覚醒が多く、途中で何度も目が覚めてしまう
・寝た気がしない
食欲の低下
・食欲がない
・食べ物をおいしいと感じない
・食べるのが億劫になって、自分から食事の準備をしない
・1か月で体重が数キロ減った(ダイエットは除く)
疲労、倦怠感
・からだがだるい
・気怠さがある
・疲れが解消されない
・ひどく疲れる
・からだが重く感じる
ホルモン系の異常
・月経の不順
・勃起障害
・性欲低下
その他のからだの症状
・頭痛
・頭が重い
・肩、背中、関節等が痛い
・便秘気味
・動悸がある
・胃痛がある
・身体の発汗が普段以上に多くなる
・息苦しい、窒息感がある
また、上記の症状と逆の症状が出ることがあります。
過眠
・昼になっても寝ている、寝過ぎてしまう
・休みの日に1日中寝てしまう
食欲増進/過食
・いつもより食べる量が多い
・やけ食いに似た食べ方をする
・夜遅い時間に食べる
・間食が増える
・数か月で太ってしまう
焦燥感
・イライラと焦ってしまう
・じっとできない
・落ち着かない
こころとからだは繋がっている
うつ病の症状について、
・気になることを気にしすぎてしまいお腹が痛くなる
・仕事に行く時に手汗が止まらなくなってしまう
・緊張すると心拍数が高くなる
といった症状があるように、こころの症状とからだの症状はつながっています。
うつ病はこころに不調をきたす病気ですが、こころの不調がからだにも出ることがあります。神経やホルモン、免疫機能などに影響を及ぼすため、これらが複雑に関わり合うことで、こころの不調に加えてからだの症状が出てくると考えられています。こころの不調とからだの不調の関係を心身相関といいます。うつ病の症状は心身相関があるため、治療時にはこころの症状の治療とからだの症状の治療が並行して行われることになります。
うつ病では
・いろんなことが気になって不安になりやすい
・物事を悪いイメージで受け止めてしまう
以上のような状態になってしまうので、少しのからだの不調でもとても大きく感じてしまいます。結果的にこころの不調やからだの不調を増幅させてしまうことがあります。
うつ病になる原因
うつ病の原因についてははっきりとした原因は分かっていませんが、危険因子になることはいくつかありますので紹介します。
【うつ病の危険因子】
・性別
女性の場合は妊娠出産が性別で関わる因子として挙げられます。性別に違和感を抱いている、トランスジェンダーの人達にとって、自分が思う性別と戸籍や身体的な性別が合ってない場合は違和感を抱くことが精神的な負荷をかけてしまうということがあります。
・年齢
子どもか大人になっていく年代や社会的に結婚や職場での地位が高くなっている年代、高齢者になる年代等、加齢と共に歩んでいくライフイベントにも関連してきますが、年齢もうつ病を発症因子が含まれています。
特に、高齢者は不安や焦燥感が強く出てくることがあるのを知っておいてください。
・人生のなかで大きなライフイベント
学校への入学、卒業
企業への就職、退職
結婚、離婚、妊娠、出産、死別等家族に関わる冠婚葬祭のイベント
などのライフイベントがきっかけになることがあります。
・自分や周りの人達の環境の変化
学校や職場、近隣地域で人の動きがあって人間関係が変わってしまう、自分が置かれている立場の変化がこころやからだに何かしらの影響を与えてしまうことがあるため、うつ病になる危険因子として挙げられています。
・つらい被養育体験
虐待やネグレクトを受けて育った、家庭環境が自分にとって良い環境でなかったことが後にうつ病を発症してしまう因子になることがあります。
・最近のライフイベントでストレスを感じたこと
学校生活や仕事のなかでストレスを感じてしまうことは多くありますが、1つのストレスがきっかけになって、こころとからだに影響を与えてしまいます。
・トラウマを感じてしまった経験
自分でトラウマだと感じてしまった経験を引きずってしまうことで、トラウマだと感じた時だけでなく、後になって繰り返しうつ症状が出てしまうことがあります。
うつ病の症状では?と考えるきっかけを知ろう
うつ病の症状を予め知ることで自分自身のこころとからだの様子の変化に気付くことができます。以下で挙げている「自分が気づく変化」や「周囲が気付く変化」が数週間にもわたって長引いている場合は、「うつ病」の可能性を考えても良いでしょう。
自分が気づく変化
・憂鬱な気分、沈んだ気分、悲しい気分になる
・物事に興味がわかない、楽しくない
・疲れやすい
・元気がない
・気怠さが続く
・集中力、意欲、気力の低下を自覚する
・寝つきが悪い
・途中でよく目が覚める
・早朝覚醒する
・食欲がない
・人と会いたくない
・朝に心身野不調を強く訴える
・ひとつのことが気になって頭から離れない
・失敗や悲しみ、失望から立ち直れない
・考え方が消極的
・自己嫌悪を抱く
・自分への価値観を感じなくなる
周囲が気づく変化
・表情が暗い
・元気がない
・睡眠不足を訴えている
・体調不良の訴えが続いている
・日常生活における作業能率が低下しているため、間違いが増えている
・1人を好んでいる様子がある
・遅刻、早退や仕事や学校等を休むことが多い
・1人で何もせずに過ごしていることが多い
・飲酒量が増えている
・過食傾向がある
・発言が消極的
・自己嫌悪のような発言がある
・落ち込みから立ち直るのに時間がかかる
・落ち込むことを繰り返す
まとめ
今回は、うつ病の症状を知るために、診断基準/分類/こころの症状/からだの症状/原因/自分や周囲の人達が知るきっかけをについて紹介しました。症状を事前に知ることはうつ病の発症を予防することにもつながります。早期発見・早期治療は今後のうつ病との関りがよくなるように結び付けてくれることが多いです。うつ病かなと思ったら、すぐに診察を受けることをお勧めします。
【参考資料】
厚生労働省 知ることから始めよう みんなのメンタルヘルス
https://www.mhlw.go.jp/kokoro/know/disease_depressive.html
公益社団法人 日本精神神経学会
https://www.jspn.or.jp/modules/forpublic/index.php?content_id=3