うつ病になると生命保険の加入は難しい
一般的に、うつ病と診断されたあとに生命保険に加入するのは難しいとされています。その理由は、多くの保険商品において、加入時に申告しなければならない病気のひとつにうつ病があるからです。
通常、保険を申し込むときには、告知書や健康診断の結果、医師の診査等によって、健康状態や既往症などをありのまま申告する必要があります。それは、死亡や入院・手術などのリスクが高い人が、健康な人と同じ条件で保険に加入すると、加入者間の公平性が保たれなくなるからです。うつ病の方はリスクが高いと判断されることが多く、保険に加入することが難しくなるのです。
私たちが保険でうつ病の経済的なリスクに備えるには、診断後では遅すぎます。特に扶養する家族がいる場合などには、長期に渡って不安な日々を送ることになるかもしれません。そのような事態を避けるには、健康な時期に保険に加入しておくことがポイントです。
うつ病であることを隠して保険に加入した場合
うつ病の通院歴や入院歴を隠して医療保険に加入できたとしても、入院や手術をして給付金を請求するときに保険会社が行う調査で通院歴や入院歴を隠していたという告知義務違反が発覚してしまいます。告知義務違反が発覚すると給付金の支給がされなかったり契約が解除されたりします。加えて今まで支払ってきた保険料も戻ってきません。
保険に加入できても入院などで給付金が支給されないのでは加入する意味がありません。必ず正しい内容の告知を行うようにしましょう。
うつ病診断後の生命保険の加入条件
ただ、過去にうつ病と診断されたことがあったとしても、一定の条件を満たしていれば、通常の健康な人向けの生命保険に加入することができる場合があります。
まず、完治して5年以上経過している場合です。保険加入時に申告する必要のある既往症は過去5年までで、それを超えるものは申告の対象になりません。したがって、過去にうつ病と診断されても、完治して5年以上経過していれば、問題なく通常の生命保険に入ることができるのです。
うつ病の診断が5年以内であっても現在健康であることが医師から証明してもらえたり、症状が軽く経過観察中と医師が判断した場合などで、保険会社が承諾すれば加入することができます。なお、そのような時は、特別条件付きの契約になる可能性もあります。特別条件とは、上乗せ保険料を支払う条件や、特定疾病(この場合はうつ病など)による入院・手術などを一定期間保障しない条件などです。
うつ病でも加入できる可能性がある保険の種類
うつ病でも加入できる可能性がある保険の種類には、 「引受基準緩和型の生命保険・医療保険」、 「無告知型保険の医療保険・生命保険」、 「がん保険」があります。
(1)引受基準緩和型の生命保険・医療保険
うつ病の方がそのように思われたときに検討すべき保険が、引受基準緩和型の生命保険・医療保険でしょう。保険に加入しようと思ったら、申込み時に自分の健康状態を申告する「告知」を行わなくてはなりません。保険会社は、告知された健康状態と、引き受けできる健康状態の基準(引受基準)を照らしあわせて、「このお客様を保険に加入させても良いかどうか?」を判断します。
「引受基準緩和型」とは、「健康状態による加入の可否の基準を緩くしてある」という意味です。言葉をかえると、引受基準緩和型の生命保険・医療保険は、うつ病を含め持病や既往症があっても加入しやすい保険だと言えるのです。
実際に引受基準緩和型の生命保険・医療保険の告知は、いくつかの「はい/いいえ」で答えられる質問のみで、それらがすべて「いいえ」であれば加入することができます。保険会社によっても変わってきますが、基本的に引受基準緩和型の生命保険・医療保険の告知で問われるのは以下のような項目です。
■引受基準緩和型の生命保険・医療保険の告知のイメージ
・最近3か月以内に医師から入院・手術・検査などをすすめられたかどうか
・現在入院中かどうか
・過去2年以内に入院や手術があったかどうか
・過去にがんや上皮内新生物があると診断されたかどうか
つまり、うつ病であったとしても、最近入院・手術・検査をすすめられていなかったり、しばらく入院をしていなかったり、がんなどの経験がなければ、引受基準緩和型の生命保険・医療保険には加入できる可能性があるのです。
健康状態による加入のハードルを下げているので、「通常の生命保険や医療保険よりも保険料は割増」「最初の1年間は保障が半分」といった条件がつきますが、それを除けば健康な方と同じように一生涯タイプの入院保障、手術保障、死亡保障などを準備することができるものもあります。さらに、他の病気と変わらず持病に対しても保障が使えるところも嬉しいポイントでしょうか。
以前の引受基準緩和型の生命保険は、うつ病を始めとする精神疾患をお持ちの方は加入が難しいものが多かったのですが、今では上記のようなうつ病でも加入しやすいタイプも増えています。うつ病の方が、病気やケガで入院・手術をしたときや、万が一のことが起こったときの保障を備えたいのなら、引受基準緩和型の生命保険・医療保険は検討してみる価値がありそうです。
(2)無告知型保険の医療保険・生命保険
先ほど引受基準緩和型の生命保険・医療保険は、「健康告知が緩くなった保険」だとお伝えしました。しかしお伝えしたように、いくら健康告知が緩い保険だといっても、たとえば2年以内に入院や手術があったり、重い持病や既往症があったりすると、加入が難しいケースも考えられます。
それに対して、無告知型の生命保険・医療保険は「そもそも健康告知を設けていない保険」です。つまり、無告知型の生命保険・医療保険では、ほぼ健康状態によって加入を断られることがないため、うつ病の方も加入しやすい保険だと言えます。
しかし注意したいのは、無告知型の生命保険・医療保険の場合、健康状態に関わらず加入しやすい分、保険料がかなり割増されていたり、保障に厳しい制限が設けられていたりすることが一般的です。
たとえば医療保険でいうと、契約から2年間は持病に対する保障がない、死亡保険でいうと契約から1年間のうちに万が一のことがあったとしても払い込んだ保険料分しか返ってこない、といった制限があります。そして、無告知型の生命保険・医療保険は、そのうえ保険料もかなり割増となっています。
無告知型は、引受基準緩和型への加入が難しいときに検討の余地はありますが、加入の検討は慎重におこなうべきだと言えそうです。
(3)がん保険
がん保険は、がんの保障に特化した保険です。もしも、がんになった場合に、診断一時金、入院給付金、通院給付金といった保障を受け取ることができます。
一般的にがんは、他の病気と比べて治療費がかかりますし、日本人の2人に1人がかかる病気だと言われています。その意味で、がん保険は誰にとっても必要性の高い保険だと言えるでしょう。
とはいえ、たしかにがん保険はあった方が良いけれど、うつ病の治療中だったら入れたのではないかと思われたかもしれません。あるいは、以前に通常の生命保険への加入を断られたショックから、自分はがん保険にも加入できないと決めつけていませんか?
実はがん保険については、うつ病の方であっても、今までにがんにかかった経験がなかったり、特定の検査で異常を指摘されていなかったり、現在入院中であったりしなければ、十分に加入できる見込みがあります。
先ほど少し触れたように、がん保険の保障はがんに特化していますから、申込み時に求められる告知もがんに関するものに絞られています。ですから、もしもうつ病の治療中でも、がんに関わる病気の経験がないのであれば、まずはがん保険から検討してみるのも良いのではないでしょうか。
まとめ
うつ病と診断されたからといって、生命保険への加入を諦めてはいけません。うつ病と診断された場合、確かに生命保険の加入時の告知審査はありますが、特定部位不担保の条件付きで加入できることもありますし、うつ病の方でも比較的加入しやすい引受基準緩和型保険などもあります。自分1人で悩まずに、通っている病院の先生、プロのFP、保険会社の営業マンなどに相談してみましょう。