「過敏性腸症候群」にかかり、エチゾラム(商品名:デパス)で治療した体験談を書きます。
私は大学受験で医学部を志望していました。合格を勝ち取るために田舎から上京し、予備校の寮に入り、友達もほとんど作らずに勉強に明け暮れました。
毎朝、単語帳片手に片道50分の満員電車に揺られ、8時から21時まで勉強して寮に帰る。そんな生活が続きました。
しかし、1浪目は不合格。親に迷惑をかけつつも、2浪目に突入しました。
その頃から年下の優秀な受験生が自分を追い抜いていくことのプレッシャーと不合格への恐怖が毎朝襲ってくるようになりました。
200名以上の医学部受験浪人生が詰め込まれた教室で、講師に指名されて答えることができなかった時の恥ずかしさは田舎出身の自分にはとても耐えられるものではなく、常に誰かに陰口を叩かれているのではないかという被害妄想を抱くようになりました。
毎朝の満員電車の中でも常に周囲の視線が気になったり、「自分の今日の服装はおかしくないか」「自分の服は生乾きで臭っていないか」などのあらぬ心配をするようになり、大人数の教室で授業があるたび、そして、ついには毎朝の電車に乗るたびに動悸が激しくなり、不安感に襲われ下痢や腹痛を催すようになりました。
ある時、授業中の教室の真ん中で腹痛を催し、我慢すればするほどお腹の調子が悪くなっていき、教室を飛び出しました。それから2か月間、授業にいくことができず心療内科にかかりました。
医師に症状を伝えると「過敏性腸症候群」と診断されました。自律神経が異常をきたし、不安感や緊張感が高まりすぎると腸の蠕動が起こってしまうということでした。
処方されたデパスを飲むと、すぐに体全体の緊張感が抜け、布団の上で動けなくなりました。
最初は布団の上で座り込み、ぼうっと意識が薄らいでゆきました。そのまま、倒れるように眠ってしまったのを覚えています。
こうして処方されたデパスを医師の指示に従い服用を続けました。その度に強い眠気が襲ってきましたが、次第に慣れてきたように思います。
その後、1か月ほどして私は無事に予備校に復帰しました。最初こそ恥ずかしかったものの、「そんなことで恥ずかしがってられるか!」と開き直ることができたため、その後はお腹がなろうが何が起きようが泰然自若として堂々と振る舞うことができるようになりました。
大学は結局、医学部ではない学部に入学しましたが、部活は空手部に入って己の肉体と精神を鍛錬し、今では会社の1部門を任されるリーダーとなっています。
あの時処方されたデパスが、私の人生を良い方向へ変えてくれたのかもしれない、そう思っています。