友人のうつ克服までの話ですが、本文では友人をAさん(男性)と呼びたいと思います。
Aさんは、病院の事務員をしていました。
事務員といっても単なる一般事務ではなく、総合病院だったので、急患の受け入れや夜中に亡くなった方やその家族の対応もしなければならない当直業務もありました。
平日は日勤として勤務し、その後当直することもあり、休みも週休2日とは表向きで大変不規則な勤務形態になっていました。
なかなか休みも取れず、仕事に忙殺される日々の中でAさんは少しずつ体調を崩すようになりました。
それまでも夜はよく眠れない体質だったAさんは、夜勤の際の仮眠でも全く眠れないことが続いたと言います。
しかし、その寝ていない状態で翌日の日勤をこなすこともあり、大変な状態が継続していきました。
そのような状態が経過するにつれて、だんだん物事をポジティブに考えることができなくなっている自分に気がついたといいます。
職場の人のひそひそ話が聞こえると「自分の悪口を言っているのではないか」と自然に考えるようになっていったと彼は語ってくれました。
そのような中で、決定的な出来事が起こります。朝、起きると体が動かない、出勤しようと靴を履いても立ち上がれないというアクシデントに見舞われました。
そのようなことは初めてだったAさんは非常に驚きますが、この時初めて自分がうつではないかと自覚し始めます。
仕事を休職することを決意したAさんは、さっそく診療内科に受診します。診療内科では、睡眠薬と抗うつ剤の処方を受けます。
睡眠薬によって少しずつ睡眠をとることができたものの、薬の効き目が弱く、眠りにつくのはいつも午前4時頃でそのまま昼過ぎまで寝るというような生活が続いていたといいます。
自分で睡眠薬の量を調整して多めに服用して眠りにつくことも多く、眠れないことによる辛さは本当に本人しかわからないものだなと思いました。
診療内科では自分のこれまでの働き方からくる無理やこれまでの自分の気持ちを吐き出したことで少しは楽になりますが、やはり、仕事を休職しているといううしろめたさはあったと思います。
病院の上司に相談しても夜勤の勤務を健康上の理由で外れることは難しく、休職期間が切れると同時に退職することになりました。
私はその話を聞いて、病院の上司にも相談をしているのに、夜勤勤務を辞められないという病院の深刻な人手不足を感じたところです。
その後、診療内科に3年間通い続け、ようやく次の仕事を見つけることができました。睡眠の状態はなかなか完全には改善されるものではありません。
次の職場では、そのような健康上の理由もきちんと話した上での再就職であったことから彼としては病気と付き合いながら人生の再スタートを切ることができたのではないかと思います。
私はそんな彼を心から応援したいと考えています。