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うつ病の体験談【その時のことは覚えていない】

実際にうつ病を体験された方の体験談を載せています。

家に居れば妻から、会社に居れば上司から言われたのは、「なぜ出来ないの?」、「どうしたの?」、「ねえ、聞いてる?」。自分が言われていることは分かっているのですが、なぜ、そこまで言われるのか自身は分かっていない。恐らく私が悪いのでしょうが、自分が何をしでかしたのかは分からない。


朝ご飯は食べているのですが、食欲があって食べているのではない、目の前に出されたから何となく食べているだけ。何となく食べているため、美味いとか不味いとかの感情は無い、何となく食べているため、「美味しいの?」、「お替りする?」と話し掛けられても私は気付かない。

「もう良いの?」と聞かれても何のことか分からない、私は知らぬ間に朝ご飯を食べ終えていた。「着替えなくて良いの?」と言われたため、目の前に置いてある洋服を着ると、「貴方、今日は会社休みなの?」。サラリーマンの私は会社へ行くのにスーツを着ていくのですが、私が着たのは何故かジャージ。気付けば満員電車に乗っている、無意識の中でも駅が近付くと「降りなくては」とボンヤリ分かっているのですが、気付けば終着駅に1人、「また、やってしまった」。

「お前、大丈夫か?近頃オカシイぞ」と言ってくれたのは同期入社の同僚、自身でもオカシイことは何となく気付いているのですが、オカシイなら病院へ行こうとはならないのが精神疾患。妻に「付き合って」と言われ連れて行かれたのが心療内科、てっきり妻が治療を受けるものだと思っていたのですが、どうやら私が治療を受けているようだ。

白衣を着ている人と話しているのだから話し相手は医療従事者、診察台など医療器具が置いてあったため、私が居るのは医療機関であることはその時は自覚しているのですが、初診時に何を話したかは覚えていません。診察を終え家に帰る途中に妻は「大丈夫だった?」と聞いてきたのですが、私は何のことだか分からない。「寒くない?」と聞かれても、熱い寒いの感情もない。今こうして文章に出来るのは、のちのち妻から聞いたから出来ること、周囲が私の異変に気付き治療を受け始めた頃の記憶や感情は無いに等しい。

「もう良いよ」と妻に言ったのは初診から1ヶ月程が経った時、「もう良いよ」とは「医療機関に行ってもダメだよ」という意味で私は妻に言ったのですが、今思えば、それが治りかけた前触れだったのです。「もう良いよ」とは、「医療機関を利用しても意味がない」ということを私が認識しているということ。心療内科に掛かるまでは、何処で何をしているのかさえ認識していなかったのですから、行きたくないという感情でも感情が芽生えたことは一歩前進。

うつ病など精神疾患は心の病気と言われていますが、専門家でさえ心が何処にあるのか実在するのかさえ分かっていないのですから、精神疾患を治すことは大変なこと。精神疾患は治りかけても再び悪化することは良くあること、また、完治が難しい疾患でもあります。

そのため、今でも常に不安は抱えているのですが、心を患って良かったこともあります。健常者は旅行をしたり買い物をしたりお金を使わないと幸福感を得られないのですが、心を患うと何事も無く普通に生きられるだけで幸せを感じられるのです。