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うつ病の体験談【話、聞けていますか?】

自殺したい時や困った時は、無料電話相談を利用したり相談したりしてほしいと、うつ病患者の周りにいる人は考えるかもしれません。しかしそれが「逆効果」になるときもあります。

うつ病患者の話を聞くことは想像以上に難しく、特殊なテクニックが必要です。また本人にとっても、話すということが想像以上に難しい場合があるのです。

まず話す内容が頭に浮かびません。自分を責める、眠れない、イライラするなど、うつ病の症状はさまざまですが、自分を責めるのは自分が悪いことをしているから、存在しているのが悪いからです。この考え方は、本人にとっては当たり前の考え方なのです。

眠れなくても別の時間には寝すぎてしまうこともあるし、いつもよりイライラしているかどうか、思考力が落ちて客観的な判断は難しいのです。本人には自覚がなく、医師に伝えられない場合があります。

思考力が低下したうつ病患者は、会話やものを認識し理解することが難しくなっています。私は、本はゆっくり単語の意味を一つ一つ思い出していかないと、理解することができず、話す言葉に関しても、それはどういう意味だろうと理解に時間がかかりました。

「いつも話していることを理解できていない。自分はなんて無能なんだ死ねばいい」と思えてきます。もし相手が理解や返答を急かしたら、焦りと自責がさらに加速します。相手の期待に応えられない自分は生きている価値はありません。

会話をするために「自分が言いたいことの言語化」も必要です。うつ病患者は、なにかを話そうとしても頭が真っ白になってしまうことが多いです。いま頭に浮かんでいる「アレ」がなんなのか、どう表現すればいいかが浮かんできません。かろうじていくつかの単語は浮かんでも、次はどうつなげて文章にすればいいかもわかりません。

結果として、とぎれとぎれに単語や動詞をカタコトで話すことになります。自分で言っていて意味がわからなくなるし、そんな自分が相手に申し訳なくなります。相手が「それってこういうこと?」と補助のつもりで口をはさむと、「ああもうそれでいいや(言いたいことは違うけどあなたがそれで満足するなら)」と会話をやめたくなります。

さらに問題は発声です。かつての私のようにまともに動けない、息をするだけで体力を消耗する場合は、一音一音発するのにも力を使います。喋りすぎると胸のあたりがつかえて苦しくなったり、喉が痛くなったりします。誰でも何時間も喋っていればそうなるかもしれませんが、うつ病患者の場合、一言返すだけでもこうなる場合があります。

ではそんな苦労を経た結果、こんな言葉を返されたらどうでしょう?「大丈夫、大したことないよ」「そのくらい平気平気」「休んでいれば治るんでしょ?」相手は励ましのつもりでも、もう二度とその人には話したくないと思ってしまいます。

ああ、自分が死にたいと思っているほど苦しんでいるこれは、人にとって「大したことない」のだな。平気だと軽んじられる程度のものなんだな。いつ治るのか自分でもわからない、きっと一生みじめなゴミのままだと思っているのに、平気で治ると言うんだな。そんなふうに思ってしまいます。それが続けば、もう人に相談する気なんておきなくなるでしょう。

ではどうしてほしいかというと、自分がどれだけ言語化に時間をかけても口を挟まず待ってほしいのです。そしてその時の気持ちを否定したり励まさずアドバイスもせず、それはつらかったねと同意してほしいのです。

また、うつ病患者本人が相談したい時には、私は「メモ書き」をオススメします。相談する前や、自分に何か違いを感じた時に、症状を紙に書いておきます。日記やSNSでもいいと思います。

そうすると、こちらがメモを見せるだけで、その場で考えながら話さなくても、相手に自分の言いたいことは伝わります。余力があれば、ぜひ試してみてください。